介護の仕事を行なっていく上で一番大切なことは何でしょうか。例えば寝たきりの人を介護するために上手にベッドで寝返りを打たせてあげるようなスキルはとても重要でしょう。それにベッドから車椅子に上手に移動させてあげるようなスキルや気持ちの良い入浴のサポートを行う技術、医療行為にも分類されるような痰の取り出しなどに習熟することも大切です。
しかしこれらの技術ももちろん大切なことなのですが、介護にとって一番大切なことではありません。介護にとって一番大切なことはサービス利用者の方やその家族がどのようなことを望んでいるのかという価値観を深く理解することなのです。
そもそも価値観とは何でしょうか。それはその人が人生や生活においてどのようなことを重視しているのかということです。例えば人付き合いについて考えてみましょう。介護を必要とする方の中にはとても人との交流に重きを置いていて身体が不自由になって一番辛いことは友人や家族と今までのように遊べなくなったという方もいます。
そのような方の介護にはレクリエーションなどを通して積極的に外部との交流の機会設けると良いでしょう。しかし逆に全く人との交流を重視しないいわゆる人間嫌いな人もいます。そうした方に対して積極的にレクリエーションなどの催しを提供することは相手にとってはただのありがた迷惑になりかねません。
そもそも介護や福祉とは相手を幸せにするためのサービスです。しかし何を幸せと思うのかは人によって1人1人異なるということを理解しましょう。このことをケアプランを作成し介護全体をリードするケアマネが忘れてしまってはいけません。もちろん相手の価値観を受け入れるといっても全てのことを実現できるわけではありません。介護を提供する側の能力の限界もありますしサービスを利用する側の予算の限界もあります。それにそもそも相手の価値観が反社会的な内容であって実現させるべきではない場合もあるでしょう。しかしそうした諸々の制約を踏まえた上で最大限できることを提供する必要があるのです。
このように相手の価値観を重視した介護を行う上でのポイントは自分の先入観や理想を勝手に押し付けないことです。例えばあなたが新米のケアマネであれば新しい仕事に憧れもあるでしょうし、実現したいと思う理想の介護の姿もあるでしょう。しかしあなたの抱いている理想の介護が相手にとっても理想の介護の姿とは限りません。こうしたイメージの乖離をなくすためにコミュニケーションを続けることが大切です。
ケアマネの仕事をしてく上でコミュニケーション能力はとても重要ですがその中でも特に肝に銘じておく必要があるものがあります。それは話すことと伝えることは異なるということです。人間はともすれば自分が話すだけで満足をしてしまい相手に対してきちんと伝わったのかということを確認しません。しかしケアプランの説明などは話して終わりではダメで、相手が理解できて伝わることが大切なのです。